「ヤクザ」だけじゃない。どこまでも「ピュア」な北野武の世界【監督別おすすめ映画】

キタノ映画といえば「ヤクザ」とか「バイオレンス」を思い浮かべる方も多いだろう。狂気と隣り合わせの笑いの後に、とても独特な「空虚」な感覚に襲われる。まるで水鉄砲を撃つかのようにあっけらかんと拳銃を発砲し、淡々と人が死ぬ。格好つけて言うと「命の儚さ」みたいなものを突きつけられる感覚をじわじわと与えてくる。そういう死が日常的にある世界を描く一方で、タケシの“子供の心”を感じる特別な作品たちがある。

3-4×10月」は大人たちが草野球するシーンから始まる。主演の柳ユーレイが常に子供のように口空けてボーっとしていて、とてもとても心配になる。「こんないい年の大人いるか?」と甚だ疑問になるのだが、不思議と「これは、もしやタケシのピュアな部分を肥大化して、具現化した…分身?」と感じてしまうような変な説得力が終始漂う。

あの夏、いちばん静かな海。」はキタノ映画の中でも異色作で、カップルがひたすら純朴にサーフィンに打ち込むという、ある意味「テーマ、一本気!」みたいな青春映画。ラストの集合写真(?)の導入には、どうしても監督の純粋さを感じてむずがゆくなる。

菊次郎の夏」は、チンピラの菊次郎(北野武)が、近所の子供とひと夏を過ごすだけのお話。一時期流行った「ブルース・ウィリス×子供」で泣かせてうまいこと儲けよう的な趣旨の映画(…筆者の勝手な妄想です)とは一線を隠す、本気で作っていたら監督の子供の心が恥ずかしげもなく溢れちゃったよ!的な映画。これはもう、ラストがとてもズルい。タケシのピュアさを語るなら絶対はずせない映画なのです。

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