ヤング≒アダルト
「ヤング≒アダルト」の主人公シャーリーズ・セロンの痛さっぷりといえば、映画史上最高レベルだろう。監督と脚本は、おそらくこれからのアメリカ映画を背負っていくであろう若き才能、ジェイソン・ライトマンとディアブロ・コーディ。一見誇張されたヒロインのヤバさもリアルに見えてきてしまうストーリーテリングと演出には脱帽。要約すると、売れない物書きのシャーリーズ・セロンが昔の恋人に会いに田舎に戻り、村八分にされるお話し。同級生は皆いい感じに所帯じみて現実とうまく付き合っているのに、17歳の自分と決別できないでいるヒロインが最高にイタく、他人事とは思えない。
さよならみどりちゃん
「さよならみどりちゃん」は青春・スポ根を描かせたら右に出るものがいないであろう古厩智之監督、渾身の「イタイ」ラブストーリー。彼女持ちのダメ男(若き日の西島秀俊)を好きになってしまった女の子(星野真里)。場末の女にはまだなりきれない、どこにでもいる普通の女の子の揺れる心を見事に描ききる。目を覆いたくなるようなリアルな場面描写と邦画特有の湿った色のパキッとしない映像が、妙に艶っぽい臨場感を生み出す。荒井由実の「14番目の月」をカラオケスナックで歌う終盤のシーンのカタルシスは言葉では表現できない感動を呼び、もともと名曲である「14番目の月」に一層物語性を帯びさせる必見のシーン。
モテキ
「モテキ」は最初はキラキラしながら主人公(森山未來)を翻弄する長澤まさみの影の部分が物語の終盤で次第に明らかになっていく。主人公の男性を惑わせる4人の女性(長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子)が全員イタく、特に麻生久美子のキャラクターは世の中の男性が思う「ウザい」を集めたような女性。登場人物のほぼ全員が「こういう人いるよね…」という”あるある”に徹して構成されているので、見ていて妙に納得してしまう。
引き裂かれた女
「引き裂かれた女」監督は巨匠・クロード・シャブロル。フランスの大御所監督の作品でよく目にする「おじさんのエロ」に、若干引いてしまうところもあるが、高名な作家とナイーブな御曹司との間で揺れ動くニュースキャスターのヒロインが、徐々にコテンパンにされていく姿はホラーの領域。見ていられないくらいイタイが、3人の主要キャストが素晴らしく、その魅力から目が離せない。ラストシーンは作品タイトル「引き裂かれた女」そのもので、どっぷりと余韻に浸れるエンディング。