宇宙、劇場、雪山・・・と舞台をかえて驚きの映像を作り出し、3年連続でアカデミー撮影賞を受賞したエマニュエル・ルベツキ撮影による映画です。今回はストーリーは置いておき、その撮影技術の妙に焦点をあてたいと思います。エマニュエル・ルベツキはメキシコ生まれで、1990年代より撮影監督してアメリカで活躍をはじめ、本3作品で大注目を浴びました。超長回しワンカットにより臨場感を存分に感じさせてくれる映像に仕上がっています。
ゼロ・グラビティ
「ゼロ・グラビティ」はアルフォンソ・キュアロン監督によるSF映画。冒頭13分ワンカットによる宇宙空間の息詰まるほどの緊張感で映画が始まる。主役のサンドラ・ブロックの目線に自然に切り替わったり、吐く息がヘルメットに当たったりと臨場感の演出も効果的だ。そしてラストシーン、サンドラ・ブロックが地球に帰ってきて水辺に横たわり生を感じた時、カメラのレンズを意識させるようにレンズフレアが起こる。観客もラストへ到着し、映画から切り離されたように感じた。
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督によるヒューマンドラマ映画。何と言っても世界を驚かされたのが、全編のほとんどが超超超長回しワンカットに見えるように撮影されていることだ。実際に2時間ワンカットにできるはずはなく、完璧に計算されリハーサルされた長回しワンカットを巧妙につなぎ合わせている。しかも手持ちカメラによる動きのある映像でだ。撮影・照明スタッフと俳優たち含めたスタッフ一丸となった技術と経験のなせる技。
レヴェナント:蘇えりし者
「レヴェナント:蘇えりし者」はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督によるヒューマンドラマ映画。自然光を利用しての9ヶ月間オールロケの撮影と明かされており、まさに映画さながらの自然との戦いに勝った映像美である。主役のレオナルド・ディカプリオが熊と死闘を演じる場面では、カメラに血が吹きつけられるなどの臨場感の演出も見られる。映画内に没頭していた観客は、ふっと、自らの安全(生)を再確認したのではないだろうか。
3年連続で世界を沸かせたエマニュエル・ルベツキ撮影の次回作も楽しみです。