俳優・女優には「はまり役」というものがあるのかもしれません。松田龍平にとってそれは、「探偵はBARにいる」の高田であり、「まほろ駅前多田便利軒」の行天であると思います。
宮藤官九郎をして「世の中を舐めた風情の役をやっている時が素晴らしい」と言わしめた松田龍平ですが、それが如実に表れているのが、この2作品なのではないでしょうか。
探偵はBARにいる
「探偵はBARにいる」は橋本一監督による札幌を舞台にした探偵映画。私立探偵である大泉洋と、助手である松田龍平が事件に巻き込まれ真相に迫るストーリー。
脚本の面白さや大泉洋の演技もさることながら、普段はやる気が無いのにここぞというときのアクション・活躍が爽快な松田龍平の魅力が光る映画となっている。
松田龍平の役どころは、大泉洋が演じる主人公探偵の相棒兼運転手役だ。北大農学部の助手で、大学の一角に住み着いてるという変人なのだが、空手の師範代でめちゃくちゃケンカが強い。そして、主人公探偵とはどうやって知り合って相棒になっているのかの背景は語られないが、正反対の性格でありながら妙に息のあったコンビとなって映画の面白さの一翼を担っている。
なお、「探偵はBARにいる」については第1作は非常に面白いのだが、続編の「探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」は正直期待はずれに終わってしまった。
まほろ駅前多田便利軒
そこで同じく松田龍平の魅力が光る作品としてのおすすめは「まほろ駅前多田便利軒」である。大森立嗣監督、瑛太主演による便利屋が事件に巻き込まれ真相に迫るストーリー。
「まほろ駅前多田便利軒」が2011年4月公開、「探偵はBARにいる」が2011年9月公開と時期が近く、ストーリーや役柄も似ている。普段は天然で気怠そうだが、やるべき時にやるべき事をやってのけるという役柄は、松田龍平にぴったりなのかもしれない。
本作では主人公は便利屋である瑛太で、その中学時代の同級生であり十数年ぶりに主人公と再開する行天を演じるのが松田龍平だ。「行天」の名はおそらく「仰天」から取られていると思われるが、自由気儘な生活ぶり、秘められた過去、飄々とすごい行動をするなど、本作の魅力を非常によく表現している。