撮影に焦点をあて、エマニュエル・ルベツキ撮影の3作品について前回の投稿で紹介しました。
今回は超長回しワンカットの原点に立ち返ってみます。「バードマン~」で使われた全編ワンカットに見える技法の原点は、ヒッチコックの「ロープ」にあると思われます。
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督によるヒューマンドラマ映画。何と言っても世界を驚かされたのが、全編のほとんどが超超超長回しワンカットに見えるように撮影されていることだ。主人公役のマイケル・キートンは落ち目のハリウッド俳優を演じる。彼が演出・主演する舞台製作を通して自身の抱える問題に直面していくストーリーだ。舞台製作の裏側や楽屋、屋上、バーなどに彼を追いかけながらもワンカットで見せていくことで、あたかもそういう舞台を見ているような臨場感がある。
ロープ
「ロープ」はヒッチコック監督によるミステリー映画。バードマンから遡ること約70年前の本作が長回しワンカットの原点であろう。当時はアナログフィルムであったため、10~15分がフィルム1本の限度であったが、カットのつなぎ目を分かりにくくすることでワンカットのように見せている。例えば、出演者のスーツの背中にズームしていき、黒くなってカットが繋がれ、ズームアウトしてまた全体を映すといった感じである。あらすじは、自らの優越性を示すために殺人を犯した2人組が、部屋に死体を隠し、被害者の両親や知り合いを呼んでパーティを開くストーリーである。隠された死体がいつ見つかるかという緊張感が、全編ワンカットでより強調される。しかも、本作は全編ワンカットであることと同義であるように、時間経過も実時間と同じになっている。それを示すように、映画のはじめは夕暮れであるが、ラストには暗くなり夜になっている。ヒッチコック監督のこだわりを感じさせる作品だ。