世界の映画監督がそれぞれのセンスで作り上げる名作たちをご紹介します。今回はその②です。
目次
マッドマックス 怒りのデス・ロード
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」はジョージ・ミラー監督によるアクション映画。
27年ぶりに公開されたマッドマックスシリーズの第4作は、半年間に渡るアフリカロケで徹底的に作り込まれた世界観が楽しめる。荒廃した世界、様々な車両や武器、ウォーボーイズや火を噴くギタリストなどの悪役と何を取ってもイカれた独創的な世界になっている。頭をからっぽにして2時間たっぷり楽しめる映画!
本作でジョージ・ミラーが見せつけた世界観で最も印象的なのは、敵役の個性的な面々だと思う。いくつか紹介したい。
火を吹くギタリスト
全く戦わないにも関わらず、強烈な印象を残すギタリスト。戦うウォーボーイズたちを鼓舞するためにギターを掻き鳴らす様は必見。
後ろのスピーカーが無駄に多すぎだったり、ギターから無駄に火を吹いたりと、とにかくサイコーなのです!
武装集団のドン「イモータン・ジョー」
本作のボスであるイモータン・ジョーも当然ながら、ものすごいインパクト。イモータン・ジョーは荒野の支配者であり、武装集団のドンであるから、見た目からして威圧的で猛々しい。馬のあご骨と歯を使ったマスクを付けており、半神・半人間のような出で立ちである。
長い棒を振り子にして戦う!
本作を観た人たちが皆思ったであろう、何その戦い方?!というシーン。
長い棒の先に人間を設置し、振り子のように揺らして戦う。しかもカーチェイスしながら。この画を思いついたのもすごいが、これをCGなしで実際に人間がやって撮影したのもすごい。
somewhere
「somewhere」はソフィア・コッポラ監督によるヒューマンドラマ映画。セレブな俳優が空虚な日常を過ごしていたときに、元妻との間の娘がやってきて、父娘で親子の時間を過ごす映画。セレブでもなければ美男美女でもない我々にはリアリティが全くわかないのだけれど、父娘の過ごす、エッグベネディクトの朝食やプールに潜ってのやりとりは美しく心に残る。
父と娘の物語
本作は、虚しさを募らせた主人公が、娘の成長に触れ、自分を見つめ直す父親の物語である。それがリアリティを持つのは、娘のクレオを演じるエル・ファニングの素晴らしさであり、当時しかないエル・ファニングの絶妙な年齢にある。
少女と大人の境界
本作の中でエル・ファニングは、少女のようにも見え、大人のようにも見え(つつあ)る。料理は上手で大人びているのだけど、プールではしゃぐ少女でもある。
ソフィア・コッポラ監督が、絶妙な年齢のエル・ファニングを上手く演出した結果が、この映画の素晴らしさである。
アンダーグラウンド
「アンダーグラウンド」はエミール・クストリッツァ監督によるヒューマンドラマ映画。ユーゴスラビアにおける戦争・内戦の中で生きる人々を描く。普通の映画は物語であるが、本作はむしろ詩に近いように思う。悲劇と喜劇、裏切りと信頼、音楽と映像、政治色と娯楽、を全部詰め込んで絶妙のバランスを取ってみせた奇跡の作品。
画面も音も “うるさい”
エミール・クストリッツァ監督のセンスといえば、うるさいことにある。
とにかく画面いっぱいに何でも入っている”うるささ”、楽器を掻き鳴らす音の”うるささ”。それでいて、なぜか映画としてまとまってしまうところが、エミール・クストリッツァ監督のセンスである。
[その①はこちら]